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私の好きなものと生きるお話。

迷い込んだ森〜残酷な神が支配する〜

※重苦しい内容なので、読めるよという方だけ進んでくださいね。↓↓

 

 

 

先月あたりから改めて読み進めた萩尾望都さんの漫画、「残酷な神が支配する」全17巻を全て読み終えました。

以前blogで少しだけ触れたのですが、主人公ジェルミが母親の再婚相手である義父から受ける性的虐待、母親との関係、薬物、売春、心の傷と向き合うことetc…を描いているのでとにかく内容が重く、読むことが辛い方もいる本だと思います。

私は幼い頃から精神疾患のある親からの虐待があって育ち、健全な親子関係、人間関係を知らずに育った人間です。(突然ぶっ込んでくるが事実として記しておきます)

そんな子どもの頃のトラウマと向き合い、強く生きていきたいと思っていた学生時代に友人から勧められてこの漫画に出会ったのがきっかけでした。

 

この作品の流れは大きく分けてジェルミが虐待を受け苦しむ前半と、その苦痛から逃れる為に義父を殺害しようと車に細工し事故で母親も亡くしてしまう所から、ジェルミが受けた苦しみを義兄であるイアンが知るところ、そしてそのイアンがジェルミの傷と向き合い苦しみもがいてゆく姿を描く後半…という感じで進んで行き、合間合間でそれぞれ揺れ動く登場人物の心情を丁寧に描写していて、重たいテーマでありながらテンポがよく、余白が美しくてとにかく繊細に描かれています。

 

ジェルミの母親のサンドラは弱々しく不安定な存在で、夫が亡くなってからは息子ジェルミのことをまるで恋人のように扱い、自分を名前で呼ばせたり、不安になると自殺未遂をはかったり、とにかく母親というには幼すぎ、ジェルミは毎回そんな弱い母親を放っておけずにお互い共依存のような関係で生きていて。

母親が自殺しないように、母親が幸せになるようにと懸命に自分を犠牲にするジェルミの姿はとても悲しいものがあるのだけど、私にはその気持ちが共感できるなぁとも思ったり…。弱さをちらつかせながら子に縋るその母親の姿は情けなく苛々するものなのですが、子どもはそんな母親であっても母親を心底嫌うことはできないので無下には出来ず、不健全な関係を築いてしまうんですよね。

 

とにかくこの作品では他にも魅力的なキャラクターが存在するので語り始めるときりがないのですが、私が今回読んで涙が出てしまったところ…、心が動かされた場面がいくつかあって。

 

・カウンセラーのオーソン先生の言葉

「きみの持ち続けているその絶望にはいまだ名前がないのだ。
誰もその名を知らないのだ。その絶望の名前を。
きみは喪失し続ける。その喪失にも名前が
ないのだ」
 
「歴史は敗者の苦痛に名前を与えない。
その絶望に近い名は......死だ」

 

・ジェルミが受けて来た苦痛と向き合う際のイアンの「生き返せない」という言葉

・後半、ジェルミがイアンに言った「僕をもう一度生んでほしい」という台詞

・イアンのガールフレンドであるナディアの母親、クレアが受けた幼い頃の性的な虐待を告白するシーン

・友人バレンタインの手紙

・ジェルミが母親サンドラに墓前ですべてを告白するシーン

 

主にこんな感じなのですが、、

 

主人公ジェルミは義父からの性的虐待により、心と身体がバラバラになる感覚に陥り、何度も心が死んでいたため、「生き返る」という言葉がとにかく頭の中を駆け巡りました。自分の意志では抗えなかった苦痛で心が死んでしまったとき、肉体は動いていたとしても自分は死んでいるも同然で。

そんな苦痛を告白された義兄イアンは、実の父親がそんなおぞましいことをしていたなんて事は信じたくなくて、信じられなくて、そんな混乱のなかでも何度も何度もジェルミの傷と向き合い続け、荒れ果てたジェルミの生活も更生させようととにかく行動するのです。

とにかくこの作品で感じることはイアンの人としての強さと、多少荒っぽくも相手の苦しみを包み込もうとひたすら努める母性と父性を兼ね備えた存在であること。

ジェルミの受けた傷を受け入れたくなくて何度も衝突するけれど、絶対に目を逸らさずに痛みと向き合うその姿は、とにかく心を打つものがあり、イアンのような存在が理想だなと思ったり自分もなりたいなと感じさせられたり。笑

とにかくイアンの存在が大きいのです。

 

ジェルミとイアン。

義理の兄弟でありながら、苦痛を知って救いだそうと踠く2人の姿は読んでいるこちらも森と霧の中に迷い込んでしまうのではないかというくらい、途方もなく暗く、光はあるのかと不安になるのですが、お互いに諦めずに自分の気持ちと向き合い続けるところが心に来ます。

 

そして、トラウマとは苦痛を与えてくる者が亡くなっていなくなってしまったとしても、消えるものではないこと。

過去は、過去ではないこと。

過去に受けた傷は、今も自分を苦しめていて、自分がその傷と向き合い続けない限りは決して癒えるものではないこと。

 

義父であるグレッグは死んだ後も亡霊のように何度も夢に現れ、彼を苦しめます。

母親の呪縛も中々解けるものではなく、まず自分が母親を憎んでいることにすらすぐには気付けないのです。

子どもにとって、親は神のような存在であり何もかも支配してしまうかのような大きなもので。

純粋で無垢なものは、自分の意志に関わらず踏み躙られてしまうのかと考えさせられ、たくさんの苦痛が思い出され、自分のなかに眠る過去が襲ってきます。

この物語は、最後まで読み進めてもはっきりと、ジェルミの傷が癒えて爽やかに終わるものではなくて。

ファンタジーのように誤魔化して描くことは決してなく、経験した苦痛がすぐに消えないことは現実の様に表現されています。

それでもジェルミは「僕はそれでも人を愛していいのだろうか?」とイアンに尋ねていました。

「誰も愛してはいけない」「愛せない」「愛とは何か分からない」と言っていたジェルミのほんのわずかな希望、前進とともに。

濃い霧の森のなかで…。

 

 

 

長々と書いてもまとまらないなー。泣

この作品はとても大事な作品で、誰もが一度は読んでほしい作品なのですが、如何せん文章力とまとめる力が私には無いので伝わりにくい駄文になってしまいました。

 

私は上記に挙げたクレアの告白で、毎回泣いてしまうんですよね。5つの時に体の穴すべてに異物をつっこまれ、いたずらされるという。自分の意志も分からぬような子どもに対して苦痛を与える残酷さ。私も子どもの頃に嫌なことをされているので無意識に涙がでるところです。心からロリコンが大嫌いで許せないところはそこから来ています。

 

読んだ後に心がずーーんと重くなるこの感じ。

けれど、心のどこかで封印していた気持ちが解放されるのか、涙がでてしまうこの感じ。

うまく言葉には出来ないけれど、

ジェルミやイアンのように私も幼い頃の自分の苦痛や母親問題とは一生向き合い続け、死んだ心を取り戻し、生き返させてあげたいと日々生きています。

 

 

いまもなお、戦争があり苦しむ子どもたちのことを思うと苦しい。

けれど、私にできることは自分を、自分の家族や大切な人たちを守ることしかできないから。。

まずそこから。

 

 

重苦しい記事ですみません。

けれど私にとって重要なお話でした。

 

 

それではまたーーー!

 

いま、なんとなーく10月を生きてる感じがしないんだよなぁ…。また暑くなって秋がどっかいっちゃった感じ。。でも金木犀はいい匂い。素敵だ。

泥臭く生きようね。